共通の知人
作:神月 無弐
◆前回までのあらすじ◆
ハジメの突然の告白に、思いを素直に受け止められず返事ができないままでいるアユミ。時間だけがいたずらに過ぎていく中、ネットで知り合った共通の知人からの提案で直接返事を伝えるためにオフ会で初めて会う約束をするが・・・
▷【書き下ろしⅡ】移動中・待ち合せの時間潰しに読める小説2(連載①/8)
▷【書き下ろしⅡ】移動中・待ち合せの時間潰しに読める小説2(連載②/8)
【第2章 ①】
待ち合わせ日当日
18:00 渋谷、ハチ公前広場。
平凡すぎるメジャーな待ち合せスポットだが、大学生の僕には自然と馴染める場所だった。
予定より15分も早く着いてしまった。あと数時間でアユちゃんに会えると思うと気が急いて仕方がない。
部屋に居てもしょうがないから早めに出てプレゼントを買うつもりだった。何軒か雑貨屋とか店をまわってみたが、よく考えたらアユちゃんの好みやサイズも知らないのだから不要なものを無理やり渡すのもどうかと思って次回にすることにした。
(次回があればだが)
7月のこの時間はまだ明るい。
学校帰りだろうか数人でダベって大声で笑ってる高校生、ショーウインドウに姿を映してダンスの練習をしているサークル、化粧直しをしているOL、ナンパしているグループ、買い物帰りで一休みしていると思われる母娘、これから飲みに出ようと待ち合わせしているサラリーマン。みんな何だか楽しそうだ。
僕の目印は去年行った中国旅行の真っ赤な表紙のパンフレット、アユちゃんは右手に赤、左手に黄色の色違いのブレスレットをつけてくると言っていた。
(アユちゃん、わかるかな)
僕はパンフレットをリュックから取り出して、少しでも見えやすいように体の前で抱えるように持ち直した。
こうして女の子と待ち合せなんて何年振りだろう。
元カノとはお互い干渉しすぎない約束だったのに、「あまり かまってくれない」といわれて趣味の一人旅で渡中している間に二股かけられて・・・さんざんな別れ方をしてしまった。
それ以来、一人の方がいいと自分に言い聞かせるようにしていたのも事実だ。
アユちゃんからいい返事がもらえたなら、今度こそお互いを尊重できる関係を築きたい。
時間だ。
ひとりで人待ちをする女性は何人かいるが目印のブレスレットをしていない。
ハチ公の前にはますます人が増えている。
僕は目印のパンフレットをさりげなく振りながら、ゆっくりと広場内を回ってみた。ハチ公の銅像前から緑の電車(通称:青ガエル)の中、地下鉄に通じる階段付近、JRの改札口前、東急百貨店の入り口を通って一周してみたが出会えない。
元いたハチ公横の場所に戻ってケイタイを確認するが何のメッセージも連絡もない。
(どうしたんだろう?時間にルーズな子なのかな?)
10分が過ぎた。
LINEを入れてみる。
—– LINE —–
[H]
アユちゃん、どこ?
僕はハチ公の右側にいるよ
―――――
もう少し待ってみよう。
20分が過ぎた
何かあったのかな?それともドタキャン?
LINEは既読にならない
30分経過
連絡ぐらいくれてもよさそうなのに
もう一度LINEを入れる
—– LINE —–
[H]
大丈夫?何かあったの
―――――
40分経過
さっきからずっとこちらを見ている女性がいる。ハチ公を囲むように円形に作られたオブジェのような簡易パイプ椅子に座りストールをひざかけに使っている。僕よりもかなり大人のOL風に見える人だ。ここからでは目印のブレスレットは見えない。
(どうしよう?聞いてみようか?)
僕は意を決して
「アユミさんですか?」
と声をかけてみた。
「いいえ、人違いです。」
「あっ、すみません」
(やっぱり違ったか)
振り向いた時、青ガエルの前にピンク色のロングカーディガンを着た同世代の女の子が誰かを探しているようだった。ここからでは手首が見えない。近づいてみる。
僕が視界に入ると
「あっ、あのお・・・、松木さんですか?」
「いや、違います。ごめんなさい」
チェッ、他の男と待ち合わせか。結構かわいかったのに。
そんなことよりアユちゃんは一体どこ?
自分より先に目印のパンフレットで僕を黙認して、がっかりしてブレスレットを外してしまった可能性もある。
他のひとりで待ってる女性数名にも声をかけてみたが、みんな人違いだった。
(笑える)
これじゃナンパじゃないか
50分経過
ここまで待ったんだ。あと10分だけ待つか。
19:00
あたりも暗くなって、街中のネオンが活気づき始めた。
1時間待った。とうとう来なかったな。
LINEも未読のままだ。
またフラれたか(苦笑)
(そっちから言い出したくせに、嘘つき)
いつもこうだ。
女の子を信じようとすると ろくなことがない。
それにしても連絡ぐらいくれても罰は当たらないだろうに。。。
また遊ばれたのか。元カノとの二股フラれ事件がよみがえる。
さっきまであんなに愛しくて寂しい気持ちだったのに、今は怒りの方が勝っている。
僕はパンフレットを丸めてゴミ籠に突っ込んだ。
(気分を変えなきゃ)
家に帰る気にもならず、しばらく道玄坂を歩いて若者に人気の居酒屋に入る。とりあえず生ビールと焼き鳥を頼んだ。腹が膨らめば気持ちもおさまるだろう。それに未練たらしいが、もし、アユちゃんから連絡があればすぐに合流できる。
(ただの遅刻ならだけど)
― つづく ―
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