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【書き下ろし連載⑤/8】移動中・待ち合せの時間潰しに読める小説2▷共通の知人

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共通の知人

作:神月 無弐

◆これまでのあらすじ◆
アユミに会えないままモヤモヤした気持ちをかかえて時間をつぶすハジメ。親切心があだとなり美人局未遂に巻き込まれたあげく母親に叱られ、女難の続く最悪の一日。もう恋など二度とするものか・・・

▷【書き下ろしⅡ】移動中・待ち合せの時間潰しに読める小説2(連載①/8)
▷【書き下ろしⅡ】移動中・待ち合せの時間潰しに読める小説2(連載②/8)
▷【書き下ろしⅡ】移動中・待ち合せの時間潰しに読める小説2(連載③/8)
▷【書き下ろしⅡ】移動中・待ち合せの時間潰しに読める小説2(連載④/8)

 

第3章 ① 恋悲劇


同日 17:00
一方、アユミは。

とうとうこの日が来た。
ハジメさんに会える。
どんなファッションが好みなんだろう。コンサバ系?OL系?フェミカジ系?お嬢様系?それともイケイケ系?それは・・・ナイナイ(笑)

(う~ん、迷っちゃうな)

ひとり暮らしのワンルームいっぱいに服を広げた。
初対面なんだから清楚な感じのXラインで私らしく決めちゃおっと。
トップスは薄手の白いブラウスにニットの肩掛けカーディ、ボトムズはボリュームのある裾の広がったひざ下からミドル丈のフレアースカート。
セミロングの髪は細いカチューシャでとめて、足元はT‐ストラップパンプスで涼しげにと。目印のアイテム、赤と黄のブレスをつければ出来上がり。

(これで良しっと。どんな反応するかな)

ちょっと早いけど、出かけよう!
見慣れた風景なのに不思議。何もかもが輝いて見える。
夕方の薄暗さにつき始めた街灯、はがれ掛けたポスター、店先のお野菜も、歩行者用の信号機さえも。

(そうだ、ハジメさんに連絡しておこう)

—– LINE —–
今、電車待ちだよ。もうすぐ会えるね。待ってて
ーーーーー

とケイタイに打ち終えて、LINEを送ろうとした時メールが届いた。

(あれ、ハジメさん?!通じちゃったかな(嬉))

送信者をろくに確認もせずにメールを開く。
すると急に画面全体が暗くなった。

(あれぇ?どうしちゃったの。反応しないじゃん)

液晶画面をいくらタップしてもウンともすんとも動かない。

(おかしいなあ)

電源ボタンを長押しして再起動する。
電源は入るが操作にまったく反応しない。

(これじゃ連絡取れなくなっちゃう。今日こそケイタイだけが頼りなのに。。。)

まだ時間はある。
待っていた電車を見送って駅近のケイタイショップに駆け込む。

「すみません。ケイタイが動かなくなっちゃって」

「いらっしゃいませ。順番にお呼びいたしますので整理券を取ってこちらでお待ちください。」

待合席には3組ほどの客が待っていた。
他のショップを探すよりは待った方が早いだろう。

10分・・・20分・・・

やっと私の番がきた。
首にスカーフを巻いたキャビンアテンダントのような制服のタメかちょっと上と思われるお姉さんが窓口カウンターの中で笑顔で迎えてくれる。
早口に状況を説明してケイタイを渡す。
お姉さんは、バックヤードでコネクターをつないで何やら確認作業をしたかと思うと、何度かどこかへ固定電話で連絡もしていた。

待つこと30分。

(早く、早くっ)

「お待たせしました。これ知らないメアドからのメールとか開きました?」

「ええ、確かに友達からだと思ってメールは開いたけど・・・」

「災難でしたね」

「えっ?!」

「いま流行りのタチの悪いタイマーBOMBA型のウイルスだそうです。」

「何ですかそれ?」

「はい、きっかり24時間タイマーがかかったようにロックされて、時間が来ると何の痕跡もなく元に戻るハッカーのいたずらウイルスみたいです」

「どうにもならないんですか?」

「私は技術者ではないので詳しくないんですけど、今のところ対処方がわかってないようで、待つしかないとのことです」

「それじゃ困ります」

「お気持ちはお察しいたしますが、ここではお役に立てそうにありません。」

「なんとかしてください」

「ケイタイ保険は加入されてますか?」

「いいえ」

「では、今お手続きいただければ代替え機をお貸出しできますが」

「それが終われば他のケイタイ使えるの?」

「はい。30分ほどお時間をいただければお持ち帰りいただけます。ただし、デフォルトの状態ですのでメール設定などの必要があります。」

よく考えてみれば登録したメアドなど覚えてる人なんかいるだろうか。

(ハードがあってもダメじゃん。それに手続きするにもどんだけ待たせんのよ、もう)

踏んだり蹴ったりとはこのことだよ。

「明日、自然になおるってことですよね。急いでるんでもういいです。ありがとう」

お姉さんの手から引ったくるようにケイタイを取り戻すと駅まで走った。

(きっと大丈夫。目印はお互いわかってる。だけど時間が。。。)

18時5分前。
(結構時間食っちゃたな。今からじゃ19時絶対過ぎちゃうよ(泣))

来た電車に飛び乗って待ち合せ場所に向かう。

19:10 渋谷

(もうこんな時間。ハジメさんまだ待っててくれてるといいんだけど)

期待が高まる。ハチ公前、青ガエル、TOKYU前・・・いない
パンフレットを抱えている男性など見当たらない。もっと特徴聞いておけばよかった。もう少しだけ待ってて欲しかった。もっとも1時間以上も遅刻した私が言えた義理じゃないけど。
ハジメさん心配してるかも。連絡くれてるだろうな。

(あんなに楽しみにしてたのに、どうして。こんな日に限って。会う前にフラれちゃうって笑える(泣)あきらめるしかない。このやるせなさをどこにぶつけたらいいの?もう)

スタバに入ってほろ苦いカプチーノを注文した。
何度触ってもケイタイは動かない。買物する気分でもないので店内で1時間気持ちを静めて家路についた。

(ハジメさん本当にごめんなさい)


翌日夕方
いきなりケイタイの画面が光ってアユミのケイタイは復活した。

(もう、遅いのよ)

LINEを確認する。
やっぱり、ハジメさんから・・・
なんて謝ればいいんだろう
あっ、Yumeさんからも入ってる。

—– LINE —–
[Y] おつ
どうだった?感想は?
―――――

返信する。

―――――
[A] それが、会えなかった(泣)
―――――

即レスが返ってきた。

―――――
[Y] どうしたの?!
―――――
[A] ケイタイ壊れて連絡とれなくなっちゃって
―――――
[Y] なんでまた
―――――
[A] ウイルスだって
―――――
[Y] はあ?!
それでお相手に事情は伝えたの
―――――
[A] まだ。いま復活したとこだもん
―――――
[Y] はやく連絡した方がいいよ
―――――
[A] うん、でもね
きっと怒ってるよね。今さら
―――――
[Y] せっかく会おうとまでしたのにあきらめちゃうの
まあ、これで縁がなかったと踏ん切りつけたいなら別だけど
―――――
[A] ・・・迷ってる
―――――
[Y] 好きにすれば。恋する乙女さん。
最後は自分で決めなきゃ
ただ、中途半端はお相手のためにもよくないと思う
―――――

Yumeさんのいうことはもっともだ。
何も間違ってないし むしろ正論。それはわかるんだけど。
ハジメさんはきっと傷ついて怒ってる。不慮のトラブルとはいえ私の軽はずみな行動がハジメさんを傷つけてしまった。どんな言葉で許してもらえばいいというの。
いっそのことフェードアウトした方がいいのかもしれない。

YumeさんとのLINEを終えてから私はしばらく悩んで考え続けた。
小さいころから人に理解されなかったり認めてもらえない寂しい気持ちをずっと我慢してきた。それを初めて心から受け入れてくれそうなのがハジメさんだ。
やっぱり、ハジメさんとのつながりが無くなってしまうのは耐えられないよ。
自分の気持ちに正直になろう。謝らなきゃ。

 

― つづく ―

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