ビジネスはよいアイデアがあってこそ成功できるものです。
みなさんは、商品やサービスを拡販したり新しい商品の企画や事業企画を立案する時、そのアイディアはどのように創出していますか?
・とにかく思いつくままに
・ひねり出す
・降りてくる
など様々かと思います。プロジェクトなどでアイディア出しをする時には一般的に「アイデアフラッシュ(idea flash)」と言い、皆でたくさんのアイデアをひらめかせて集める作業をします。ですが、よほどのアイディアマンか天才でない限り、毎回毎回そうそう思いつくものでもありませんよね。
アイデアをたくさん出すためには、コツみたいなものがあって

最初はテーマにそって思いつく限り、とにかく絞り出して出して書き留める

ひと通りアイデアが出尽くしたら、カテゴリを条件に視点をかえてみる
というステップを踏むことでアイデアの数を増やすとともにアイデアを網羅すことができるようです。
アイデアをたくさん出しても、最初のアイデアが一番いいということもありがちですが、たくさんのアイデアの中で比較検討することでメリット・デメリットの検証もできるので意義はあります。
そして、最近私が実感したのがアイディア出しの最終段階は
「ホスピタリティ」を意識する
ということです。
【ホスピタリティ】
人が人に対して行なう「おもてなし」の行動や考え方。
接客・接遇の場面でホスト側がゲストのために行なう行動に対して、ゲスト側が感謝の気持ちを持ち、これがホスト側に伝わることで共に喜びを共有するという「相互満足」があってこそ成立する。
ホスピタリティといえば 「おもてなしマインド」 を武器に招致に成功した2020東京オリンピックの招致プレゼンが記憶に新しいところかと思います。どんなビジネスも最終的には人であるお客様に向けてのアイディアを展開していくわけですから、例えばこの商品やサービスを利用してくれるお客様は
・このアイディアで喜んでくれるだろうか
・このアイディアをどう工夫したら満足してくれるだろうか
というチェックを加えてみてはいかがでしょう。
アイディアフラッシュで無理くりひねり出したアイディは時として荒削りすぎて受け手のことを置き去りにしてしまっているケースが少なくありません。最終段階でホスピタリティの視点からチェックすることで、お客様の立場に立っての手厚いアイディアとして磨きをかけることができるはずです。
今回は、私の身の回りであった「ホスピタリティ発想からのサービス改善」の事例をご紹介します。
私は毎年同じ場所で健康診断受けているのですが昨年、受付を済ませて待合室で待っている時に、ちょっと感動した出来事がありました。話はそこから始まります。
男性としては小柄な私は、毎回受付をすませてからお願いしなければならないことがあります。それは検査衣のSサイズを借りることです。男性の更衣室にはMサイズ以上の大きいものしかないので私が着るとダボダボで検査どころではないんです。それで仕方なく
「すみません。Sサイズの検査着ってありますか?」
と係りの方に尋ねると
「あいにく男性専用のものはご用意がなくて。男女兼用で申し訳ないのですがどうぞ」
といって女性の更衣室からSサイズを持ってきてくれます。
特に色や形、合わせなどが違うわけではないので気にしなければ何でもないのですが、正直、男としてはちょっと凹みます。男性用の更衣室に入ってコンプレックスを感じながら悶々とて着替えを済ませて待合室で順番を待ちます。
と、10分近く待ったところで私に近づいてくる女性がいます。
よく見ると先ほどの受付の女性。私を探して見つけるとソファに座っている視線の高さに合わせるようにしゃがみ込んで小声で
「良かったらこれもお使いください」
って言ったんです。何かと思って見た差し出された手の先には、なんとSサイズのサンダル(スリッパ)。しかも足元にキレイに揃えて置いてくださりました。確かに、更衣室のロッカーには既定サイズのモノしかなくて歩くたびにパタパタと音が鳴ってちょっと恥ずかしかったんです。
さらに
「歩きにくかったですよね。気が利かなくて すみません」
って言ってくれて、履き替えると今まで履いていた既定サイズのスリッパを引き取ってくださいました。
これには参りました。きっと係の人から話を共有され、瞬時に相手の立場になって頭の先から足元まで気配りをめぐらせた時に気が付いて、頼んでいないスリッパがひらめいたのでしょう。そして彼女の人柄や経験、人を思う気持ちがベースにあって自分の判断でスグに行動したものと思われスゴく感動!しました。
人間こんないい気持ちになった後は気分が良くなるのも当然。どんなに待たされても、案内の手際の悪さにいつもならイラッとさせられる場面も、スリッパを見てほくそ笑んでしまう自分がいました。滞りなく検査が終わって、スリッパの返却に一言お礼を伝えたくて受付に行ったんですが彼女の姿はなく・・・
そして今年。
アイディア出しに「ホスピタリティ 発想」を加えるべきだと思ったきっかけが起こります。
またいつものように嫌な思いをするのだろうと受付に行くと、私だけ更衣室のロッカーを指定されキーを渡されました。システムが変わったのかな?とも思ったのですが私だけって不自然ですよね。悶々としながらロッカーを開けてすべてが感動!に変わりました。
ロッカーの中にはSサイズの検査衣とSサイズのスリッパがきちんと揃えられていたんです。これなら誰かに頼んだりすることも、女性用を借りることを気にすることも、ブカブカで歩きにくいスリッパで嫌な思いをすることもありません。
これって昨年の受付さんの行動から「事前に用意しておけば嫌な思いをさせないで済む」というCS(顧客満足)のアイディアにつながったってことですよね。アイディアの本質というか、あるべきアイディアの形や発想力みたいなものを強烈に思い知らされた気がしました。
ちょっと古いですが、どこかの漫才師のセリフではありませんが
「このサービス 惚れてまうやろーーーっ!!(笑)」
コンプレクス が VIP待遇 に変わったと錯覚する瞬間でした。
今回の実体験を通して、今まで私が提案してきたアイディアを振り返るとなんだか自己満足ばかりで本当にお客様の心に響くものだったのだろうか?と反省ばかりです。
相手のことを思うことから始まるホスピタリティ発想のアイディアは、確実に幸せの連鎖を呼びます。送り手と受け手の双方がハッピーなんて素敵だと思いませんか。
あなたがもし、アイディアに行き詰まった時には、ぜひこの視点を取り入れてみてはいかがでしょう。
お仕事の成功をお祈りいたします。