営業アラカルト

【心に残る営業秘話】いざコンペ!③結果発表☆油断禁物!本当の勝負はまだ終わっていない

■コンペの後

前回は、コンペ当日の心構えを中心にお話をさせていただきました。
【心に残る営業秘話】いざコンペ!②プレゼン本番で悔いを残さないために 

今回はコンペ結果発表後の最終章。
私の当時の実体験からのエピソードをご紹介しよう。

広告主として媒体の買い付けと決定権を持っていた私が、AE制を引かないのには理由がある。
1社依存のリスク回避と、その会社でしか扱えないというオリジナル媒体を含め広い情報を求めたからだ。
そのため広告代理店 10数社との交渉窓口を担っていた私。

女性向け商品の通信販売会社でピーク時には60億円の広告予算をもち、雑誌広告においては月間20本以上のレギュラーとスポット媒体の選定にあたっていた。

通信販売=無店舗販売
よって広告は店舗と同様、どこに何店舗開くかによって売上は左右される。そのため家賃のような固定費となる広告スペース料金を少しでも安く仕入れるのが媒体担当の腕の見せ所となる。

私は 1年契約 で同じ媒体に同じスペースを12回出し続けるというオトナ買いのようなヴォリュウム・ディスカウント交渉をすることを思いついた。しかも前払いでだ。
年間何億にもなる支払を前払いでし、それ以上の利益を上げなくてはならない。その間に万一、広告代理店が倒産でもしようものなら・・・不安が付きまとう中、こちらは必死だ。


会社の規模に関わらず、これまでの取引で優良な広告代理店すべてを媒体提案のコンペに
招待する。
価格競争なら差異はわずかになることはわかっていた。

✓ 広告代理店と背景にあるメディア業界の関係性
✓ 課題に対しての柔軟対応性
✓ 1年を通じての提案発展性見込み
✓ フットワークの良さ(社内体制)
✓ 営業担当の熱意

 

この5つをもって「信頼」できるパートナーとしての広告代理店を絞り込むことにした。
このチャンスを生かして大いにチカラを振るって欲しいと願いをこめて。
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1位: 年間 4.0 億円 の雑誌広告出稿窓口
2位: 年間 2.0 億円      〃
3位: 年間 1.5 億円    〃

*AE制ではないのでこのように扱いを分散させる
*前払いにての全額一括支払
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コンペを勝ち抜いた広告代理店は該当の媒体については1年間、取引も収益も安泰というわけだ。
だが、これが曲者となる。コンペを勝ち抜いた者の権利なのだからその部分は良しとしても、その他の提案がだんだんと減ってくる。まあ、媒体の数にも限りがあるからわからなくもないのだが雑誌以外にもメディアはある。

ましてや「媒体は生き物」だ。

あたる企画や特集もあれば廃刊に追い込まれる媒体もある。それにつれて売上も乱高下するため、媒体計画の軌道修正は常に行う必要がある。そのたびにパートナーとなった広告代理店に頼ざるを得ない。
選んでも選ばれても安心して休んでいられる暇はない。
Win – Win の関係を保ち続けるのは本当に難しいものだ。

この時のコンペは非常に困った。

案の定、提案の内容はどこも似たり寄ったりで、私以外の社内審査員は微妙な価格差を優先するとともに、明らかにプレゼンの演出に惑わされがちだった。
自社内のクリエイティブスタッフで広告を内制作していた当社にとって年間、数十万円の微妙な差なら広告の質で何とでもカバーできる。それが社長から学んだ私の持論。総合力が重要だ。
それでも、全審査員の採点投票により、1位・2位 はほぼ同票で絞られた。

どちらも日本のトップ10内に位置するメジャーな広告代理店だった。
最終的な優劣の決定権は普段、交渉窓口している私に一任された。
たかが 1位 と 2位 を決めるだけ。されどその扱い額には2億円もの差がある。
プレッシャーはかなりのものだった。

当初、私が審査基準と決めていた メディア業界の関係性 、柔軟対応性、発展性見込み、フットワーク社内体制)いずれも甲乙つけがたい。
あとは、営業の熱意でしか推し測りようがない。

私は、考えた。
自分がヒール役に徹するのはしょうがない。
自分の考えをまとめ、社長の決裁をもらってから決行する。

 

あえて午後5時。
同じ内容をケイタイ電話に2件。

「ああ、ハク(*アカウント名でご容赦ください)です。実は折り入って相談したいことがありまして。。。今からこちらに来ていただけることって可能ですか?」

「今からですか!?」

「申し訳ないんですが、悪い話ではないんで」

2社の対応はこうだった。

A:「この後1件入っちゃってるんですが・・・調整しますのでちょっとお時間ください。1時間後ぐらいになっちゃいますがすぐにお伺いさせていただきます」

B:「すみません。今出先で戻れそうもないんで、明日にしていただけないでしょうか?」

どちらも電話から漏れてくる背景のノイズから出先であることはすぐにわかった。
嘘はついていないだろう。

どちらにもご要望通りに「承知」の旨を伝える。

パートナーとして1位を勝ち取ったのはもちろん

A  だ。

プレゼン結果発表日前の「相談+悪い話ではない」のキーワードで 内定と察することができるか?
察したとしたら当社の優先度はどの程度の位置にあるのか。

そう、営業の思いを試したのだ。

本当に申し訳ない。心よりお詫びする。
力量が互角ならあとは気持ちで判断するより私にはすべがなかった。
決裁責任を背負った者の慎重にならざるを得ないクライアントの気持ちも少しだけ汲んでいただけるとありがたい。

後日わかったことだが、電話をかけたあの日、都内で大きなスポーツイベントがあって両社ともその運営に絡んでいたらしい。
当然、既存招待客のアテンドなどを優先したいのが本心だろうし、たまにはイベントを楽しんで新しい刺激を受けるのも営業活動のためには必要だったかもしれない。

でも、ここで明暗は分かれた

かたや4億円の契約をゲットし、かたやあと一歩のところで半減する結果に。
「なりふりかまわず 走れ!メロス で勝利する」 といった ところだろう。

本当はどちらを選ぶのが正解だったのかは今でもわからない。
だが、あの日あの時点で感じた「信頼」への決断は間違いではなかったと思っている。
あらためて、あの日の2人の営業にお詫びする。
そして
ありがとう。

これは一例に過ぎないが、最後のジャッジで困った時に

営業担当の一挙手一投足がクライアントに与える影響は思っている以上に大きい

ことを覚えていて欲しい。

本当のプレゼン結果は、営業の姿勢にあり

健闘をお祈りする。

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