営業アラカルト

【心に残る営業秘話】縁故入社に負けるな、会社はキミの営業力で動く!

広告を多く出向している企業には広告スペースや販促ツールばかりではなく、CMや商品キャラクターとして起用されたいタレントの売り込みなどが毎日のようにあります。

通常はオーディションなどによって正規のルートで採用されるのですが、日頃の営業活動によってコネをつけておくのが目的です。

コネ(縁故)と言えば代表的なのがスポンサーをたくさん扱うマスコミ業界で、有名タレントや政治家のご子息などを受け入れることも少なくありません。
広告収入で利益を上げているマスコミ業界においては、コネを受け入れることでスポンサー契約を継続し続けたり、万一のトラブルを穏便におさめたり、新たな利益を生み出す可能性が高まるからです。


広告代理店の幹部である友人に話を聞いたところ、コネ入社の社員は大事にされてきた人間たちなので、欠点としては「打たれ弱い」「わがまま」「のんびり屋」といったところもありますが、裕福な環境下で教育の機会に恵まれ、留学での海外生活の経験があり語学面では優秀な人材も多く、精神的に余裕を持っているせいか人柄的には問題ないようです。
もちろん個人個人によりますが、要は使いようですね。
そのため、とても露骨ですが受け入れたコネ入社の社員たちのことを隠語で「人質」と呼んだりしている企業もあるようです。とのこと。

 

広告代理店にも「コネ入社」は存在し、その多くはいずれ取引先の幹部候補となる社長や役員のご子息や親族だということだった。

 

当時、広告主として数十社の広告代理店との交渉窓口を仕切っていた私にもこんな経験があります。
(*ここからは便宜上、私のことをアカウントネームのハクと称させていただきます)

ある日、一目置いていた広告代理店の役員さんからアポイントの申し入れがありました。プレゼンの時期でもなく直近にトラブルがあったわけでもないので断る理由もなくお会いすることにしました。

役員:「いつもお世話になっています。本日は折り入ってお願いがございまして」

ハク:「どうされました、役員さんが自らおいでになられるなんて ちょっと驚いています。」

役員:「はい。お忙しい中、押しかけましてすみません。実は先般、縁故入社で社員を受け入れまして。これがなかなか熱心な好青年でして研修が一通り終わって本人が営業をやりたいと申していまして、弊社では初の試みなんですが現場に出してみようかと考えております。」

ハク:「なるほど、それは楽しみですね。今後は先輩営業と一緒に当社へも来社されるとのことで、わざわざご挨拶にいらっしゃってくれたんですね。ありがとうございます。」

役員:「ええ、それもあるんですが・・・お願いというのは御社というよりハクさんにお預けしたいと」

ハク:「えっ!?まさかウチに出向させたいということですか?」

役員:「いえいえ、そうじゃありません。彼は、いずれは一族の会社に帰っていく人間です。広告代理店の私たちには販売業や製造業といったいわゆる一般企業内での経験がないのでその時に役に立つ考え方などを伝授できる術がありません。

彼のお父さんの会社には弊社が創業当初からお世話になっているんで先方の社長のためにも戻った時に良い経験ができたと困らないようにしてあげたいんです。

弊社の各営業担当にお取引のある窓口担当者様のお人柄やご経験などをヒアリングさせていただいたところ、皆が納得できてお名前が挙がったのが御社でした。
お付き合いのあるクライアントの中でこれをお願いできるのはハクさんしかいません。
どうか御社の専属営業担当の一人として育ててやってはもらえないでしょうか。お願いします。」

何でも腹を割って正直に話してくれるのがこの役員のいいところなのだが、冷静に考えれば自分たちの利益のために縁故入社させた社員を別のクライアントに育てて欲しいということではないか。
当社とコネ入社君の会社は業界も違えばコラボの接点さえ見いだせない会社だ。何のメリットがあるのだろうか?ましてや自社内の社員育成すら問題になっているというのに、無理難題にもほどがあるだろう。

それにしてもそれほどに大事にされているコネ入社君、諸先輩方に感謝を忘れてはいけない。
キミの活躍に期待しているよ。

その後、両者の思いのたけを十二分にディスカッションし

・色眼鏡は使わない
・彼の対応は私に限定しない
・慣れるまで単独での折衝には応じない
・営業担当の責任者を明らかにすること
・彼の成長に責任は持てない

 

の条件で役員の熱心な懇願をお受けせざるを得なかった。

「商談中のハクさんの会話や考え方、対応を直近で見ているだけでも彼なら何かを感じてくれるはずです。私も影響を受け、勉強させていただいています。無理を言ってすみませんが、どうかくれぐれもよろしくお願いします。」

歳の離れた目上の立場からそこまで言われればさすがに悪い気はしない。これまで分け隔てなくできる限り公平に対応してきただけなのだが、真摯に継続することが思いとなって周りに影響していくことを知った出来事でした。

確かにコネ入社の社員はその存在自体が営業担当と同様に会社への貢献度はかなり高いといえます。
ただしそれは、あくまでも会社を安定させるための保険の役目としてのことです。
会社を形作り未来を切り開いていけるのは営業諸君の努力の積み重ねのみによって成すといっても過言ではないでしょう。

様々な立場があってそれぞれ会社のためにひたむきに営業は駆け回る。
素敵じゃないですか!頼りにしていますよ、営業様。

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